野球肩
野球肩とは
野球肩とは、投球動作に関連して肩の痛みを発症するスポーツ障害の1つです。
腱板損傷、インピンジメント症候群、リトルリーグショルダー(上腕骨骨端線障害)、ルーズショルダー(動揺肩)、肩甲上神経損傷などの疾患を原因とします。
野球肩の種類と原因
投球動作の繰り返し、正しくないフォーム、肩や肩甲骨まわりの筋力不足、体幹、股関節の柔軟性の不足など、様々な要因が影響しています。
〇 インピンジメント症候群
肩を上げていくとき、ある角度で引っ掛かりを感じ、それ以上に挙上できなくなる症状の総称です。悪化するとこわばりや筋力低下なども伴い、夜間痛を訴えることもあります。肩を挙上するとき、あるいは挙上した位置から下してくるときに、ほぼ60~120°の間で特に強い痛みを感じることがあり、有痛弧微候(ペンフィルアーク)といわれます。
〇 リトルリーグショルダー
骨端線閉鎖前の成長期に、繰り返す投球動作によって生じる投球障害です。15歳未満の成長期では、上腕骨近位端の成長軟骨に障害が起こります。投球動作で上腕骨ににかかるひねりのストレスと投げ込むときに起こる上肢への牽引力、さらにその動作を行う際に働く筋肉の張力による負荷が成長軟骨部分に作用します。投球数の多さによる疲労性のストレスが蓄積することで徐々に損傷していきます。
〇腱板損傷
腱板とは、肩の中にある棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋という4つの筋肉の腱の複合体をいいます。スポーツでこの部位を負傷することは多く、腱板損傷とは、肩にある上腕骨頭に付着している腱が骨頭から剝がれたり、破れたり損傷のことをいいます。痛みで腕が挙げられない。夜、痛みで目が覚める。腕を下すときにも痛みが走る。痛めた肩を下にして眠れないなどの症状が現れます。
〇ルーズショルダー
一般人の範囲以上に動いてしまう方におおいスポーツ障害です。肩関節の安定化関わっている上腕骨と肩甲骨の間にある靭帯や関節包が先天的に緩い状態にあります。こういう人が肩を使いすぎると、周囲の組織を損傷し症状が現れてきます。テニスのサーブやスマッシュ、バレーボールのスパイクやサーブなどで生じます。肩を使ったときに痛みます。肩の不安定感・脱力感をともなうことまあります。また、投球動作のフォロースルーの際に、肩が抜けるように感じることまあります。
〇肩甲上神経障害
棘下筋を支配している肩甲上神経が、投球のフォロースルーのような動作の時に引っ張られたり、圧迫されたりして損傷をおこしたものです。肩の痛みが肩の後ろ外側に放散します。肩甲骨の山が目立つようになります。肩全体に疲労感があります。
野球肩の治療
〇保存療法
数週間から数カ月の投球中止によって痛みが軽減されることが多くなります。投球を中止している間も、投球フォームのチェックや改善を行い、再発防止に努めます。
〇リハビリテーション
超音波、ハイボルト、低周波、アイシング、ホットパックなどによる物理療法、ストレッチ、筋力トレーニングを行います。
〇手術療法
保存療法で十分な効果が得られない場合には、手術を検討することがあります。関節鏡視下での「デブリードマン」、肩峰の骨切除を行う「除圧術」などがあります。
野球肩の予防
〇正しいフォームを身につける。
〇筋力トレーニングやストレッチで、筋力不足、柔軟性の不足を改善する。
〇投球時、肩甲骨からの始動を意識する。
〇球数制限を設ける、登板間隔をあける。